
PPI起因性胃炎とは?
PPI起因性胃炎とは?
PPI起因性胃炎は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期服用によって引き起こされる特定の種類の胃炎です。これは、単なる胃の炎症ではなく、PPIが持つ強力な胃酸分泌抑制作用が原因で、胃の組織に特異的な変化が起こる病態です。
PPIは胃酸の分泌を強力に抑制します。これにより、胃の粘膜が萎縮し、クロモグラニンAというタンパク質や胃酸分泌細胞の増殖に関わるホルモン(ガストリン)が増加します。これらの変化が長期的に続くと、胃粘膜に炎症やびらん(ただれ)が生じ、最終的に胃炎へと進行すると考えられています。
これは、PPIが原因で発生する胃炎であり、他の一般的な胃炎とは病態が異なります。
長期間PPIを服用している人: 数年以上にわたってPPIを服用している場合にリスクが高まります。
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染していない人: ピロリ菌がいる場合、胃の粘膜がすでに萎縮していることが多いため、PPIによる胃炎は起こりにくいとされています。むしろ、ピロリ菌がいない健康な胃に、PPIの影響が出やすいと考えられています。
特に症状がないのに予防的にPPIを服用している人: 逆流性食道炎などの明確な診断がないにもかかわらず、漫然とPPIを服用している場合に注意が必要です。
PPI起因性胃炎は、通常自覚症状がほとんどありません。多くの場合は、内視鏡検査(胃カメラ)で偶然発見されます。 しかし、進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
胃もたれ
胃の不快感
食欲不振
これらの症状は、他の胃の病気と区別がつきにくいため、医師による精密な診断が必要です。
最も確実な診断方法は**内視鏡検査(胃カメラ)です。 内視鏡で胃の粘膜を観察すると、特徴的な変化が見られます。特に、胃の奥の方にポリープ状の隆起(腺胃ポリープ)**が多数見られることがあり、これはPPI起因性胃炎の重要なサインとなります。
また、組織の一部を採取(生検)して病理検査を行うことで、胃粘膜の細胞の増殖や炎症の状態を確認し、確定診断に至ります。
最も効果的な治療法は、PPIの減量や中止です。 症状や元の病気(逆流性食道炎など)の状態にもよりますが、医師の指示のもと、徐々にPPIの量を減らしたり、より作用の弱い胃酸抑制薬(H2ブロッカーなど)に切り替えることを検討します。
PPIの服用を中止すると、数ヶ月以内に胃の粘膜の状態は改善することが多いです。ただし、自己判断での中止は危険なので、必ず医師と相談してください。
PPIは逆流性食道炎や消化性潰瘍の治療に非常に有効な薬剤ですが、長期服用には注意が必要です。
定期的な内視鏡検査: 長期間PPIを服用している方は、医師の指示に従い、定期的に内視鏡検査を受け、胃の状態をチェックすることが重要です。
漫然と服用しない: 必要以上に長期間、あるいは必要性の低い状況でPPIを服用しないようにしましょう。医師と相談し、本当にPPIが必要なのか、他に選択肢がないかを確認することが大切です。
症状があれば医師に相談: 胃の不快感や症状が続く場合は、必ず医師に相談し、適切な診断と治療を受けるようにしてください。
PPI起因性胃炎は、適切に管理すれば改善する病気ですが、その存在とリスクを理解しておくことが、長期的な胃の健康を守る上で非常に重要です。