
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)と大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)の同時検査について
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)と大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)の同時検査について
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)と大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)は、消化器の健康を守る上で非常に重要な検査です。近年、これらの検査を同じ日にまとめて行う**「同日検査」**を選択する方が増えています。当院では、患者様の負担をできる限り軽減するため、この同時検査を積極的に行っております。
ここでは、同時検査がもたらすメリットとデメリットについて、詳しくご説明します。
大腸カメラ(下部消化菅内視鏡検査)とは
大腸カメラは、肛門から細いカメラを挿入し、大腸全体(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸)と小腸の末端部(回盲部)を観察する検査です。大腸ポリープ、炎症性腸疾患、大腸がんなどを発見するために行われます。
検査前準備:
検査の数日前から食事制限を開始します。消化の悪いもの(種実類、海藻類、きのこ類など)を避けます。
検査前日は、指定された検査食や消化の良い食事を摂取します。
検査当日は、朝から食事を摂らず、下剤を服用して大腸の中を完全に空っぽにします。これが検査の成否を大きく左右するため、非常に重要です。
検査方法:
鎮静剤を使用する場合と使用しない場合があります。鎮静剤を使用すると、眠っている間に検査が終わるため、苦痛が軽減されます。
大腸に空気や炭酸ガスを送り込みながら、カメラを進めていきます。
観察中にポリープが見つかった場合は、その場で切除(ポリペクトミー)することもあります。
胃カメラは、口または鼻から細いカメラを挿入し、食道、胃、十二指腸を観察する検査です。食道炎、胃潰瘍、胃炎、胃がん、ヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無などを調べます。
検査前準備:
検査前日の夜から食事を控えます。
検査当日の朝は、水や透明な飲み物以外は口にしません。
検査方法:
鎮静剤を使用する場合と使用しない場合があります。鎮静剤を使用すると、苦痛が軽減されます。
口から挿入する場合、咽頭麻酔を行います。
鼻から挿入する場合(経鼻内視鏡)、鼻腔の麻酔を行います。
大腸カメラと胃カメラの同時検査は、同じ日に両方の検査を続けて行う方法です。通常、大腸の準備が完了している状態から始めます。まず大腸カメラを行い、その後、同じ鎮静下で胃カメラを行うのが一般的です。
鎮静剤の使用: ほとんどの場合、鎮静剤を使用します。一度の麻酔で両方の検査を終えることができます。
検査時間: 両方の検査を合わせて30分から1時間程度が目安です。ポリープ切除など処置を伴う場合は、さらに時間がかかることがあります。
身体的・時間的負担の軽減:
来院回数の減少: 通常、別々に行うと2回受診する必要がありますが、同時検査なら1回で済みます。
鎮静剤の使用が1回で済む: 鎮静剤の影響下にある時間が短縮され、回復が早まります。
食事制限・下剤服用の回数が1回で済む: 検査前の準備が1回で済むため、身体的な負担が大幅に軽減されます。
早期発見の可能性向上:
大腸がんや胃がん、またはその前段階の病変は、複数の場所に同時に発生する可能性があります。同時に検査することで、見落としを防ぎ、より広範囲の病変を一度に発見できる可能性が高まります。
胃がんや大腸がんの既往がある人は、他の部位にも病変が見つかるリスクが高いため、同時検査が推奨される場合があります。
経済的負担の軽減:
受診回数が減るため、交通費などの諸経費が抑えられます。
検査費用自体は個別に受けるよりもやや安くなる場合がありますが、病院によって異なるため確認が必要です。
検査時間の延長:
それぞれの検査を単独で行うよりも、全体としての検査時間は長くなります。
鎮静剤の効果が切れるまで、リカバリー室で休む時間も長くなります。
鎮静剤によるリスク:
鎮静剤を使用する場合、まれに血圧低下や呼吸抑制などの合併症が起こる可能性があります。特に、高齢者や心臓・呼吸器系の疾患を持つ方は注意が必要です。
検査後は運転ができないため、公共交通機関の利用や家族の送迎が必要です。
大腸準備の失敗:
大腸カメラは、腸内の洗浄が不十分だと正確な観察ができません。下剤の服用方法や食事制限がうまくいかなかった場合、再検査が必要になる可能性があります。
大腸カメラと胃カメラの同時検査は、一度の受診で両方の検査を終えることができるため、多忙な方や、検査に対する不安や恐怖心が強い方にとって非常に有効な選択肢です。特に、40歳以上の方や、ご家族にがんの既往がある方には、両方の検査を定期的に受けることが推奨されています。
ただし、検査時間が長くなることや、鎮静剤によるリスクも考慮する必要があります。検査を受ける際は、担当医と十分に相談し、ご自身の健康状態やライフスタイルに合った選択をすることが重要です。