胆石について:その原因、症状、そして治療
胆石は、胆のうや胆管に形成される結石のことで、日本人の約10%に存在すると言われています。食生活の欧米化に伴い増加傾向にあり、成人病の一つとして認識されています。
胆石ができる原因
胆石の主な成分はコレステロール、ビリルビン、カルシウムなどです。これらの成分が胆汁中で飽和状態になり、結晶化・固形化することで胆石が形成されます。リスク因子としては、以下のようなものが挙げられます。
- 食生活の欧米化: 高脂肪・高コレステロール食はコレステロール胆石の形成を促進します。
- 肥満: 肥満は胆汁中のコレステロール濃度を上昇させます。
- 急速な体重減少: ダイエットなどによる急激な体重減少は、胆汁の成分バランスを崩し、胆石形成を促進する可能性があります。
- 女性: 女性ホルモンの影響が関係していると考えられています。特に妊娠・出産を経験した女性に多い傾向があります。
- 加齢: 年齢とともに胆石の発生リスクは高まります。
- 遺伝的要因: 家族に胆石症の人がいる場合、リスクが高まります。
- 特定の疾患: 糖尿病、クローン病、溶血性貧血なども胆石形成のリスクを高めます。
胆石の症状
胆石があっても、必ずしも症状が出るとは限りません。無症状で経過する「サイレントストーン」も少なくありません。しかし、胆石が胆汁の流れを妨げたり、炎症を引き起こしたりすると、以下のような症状が現れます。
- 胆石仙痛(Biliary colic): 最も特徴的な症状で、食後数時間して右上腹部からみぞおちにかけて突然現れる激しい痛みです。背中や右肩に放散することもあります。数十分から数時間持続し、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
- 急性胆嚢炎: 胆石が胆嚢の出口に詰まり、胆嚢が炎症を起こす状態です。持続的な右上腹部痛に加え、発熱、悪寒、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが現れることがあります。
- 急性胆管炎: 胆石が胆管に詰まり、細菌感染を伴う炎症です。発熱、右上腹部痛、黄疸の3つが揃う「シャーコットの三徴」が特徴です。重症化すると敗血症となり、命に関わることもあります。
- 急性膵炎: 胆管の出口付近に胆石が詰まることで、膵臓の炎症を引き起こすことがあります。上腹部から背中にかけての激しい痛みが特徴です。
胆石の診断と治療
胆石の診断には、超音波検査(エコー)、CT検査、MRI検査(MRCP)などが用いられます。
治療法は、胆石の種類、大きさ、数、症状の有無などによって異なります。
- 経過観察: 無症状の胆石や、症状が軽い場合は、定期的な検査で経過を観察します。
- 薬物療法: 胆石を溶かす薬(胆石溶解剤)が処方されることがありますが、効果が限定的で、再発のリスクも高いです。
- 体外衝撃波胆石破砕術(ESWL): 体外から衝撃波を当てて胆石を細かく砕く治療法です。コレステロール胆石で、胆嚢の機能が正常な場合に適用されることがあります。
- 手術(胆嚢摘出術): 症状がある場合や、胆嚢炎を繰り返す場合などには、胆嚢を摘出する手術が最も確実な治療法とされています。近年では腹腔鏡下手術が主流で、患者さんの負担が少ないのが特徴です。
- 内視鏡的治療: 胆管に詰まった胆石に対しては、内視鏡を用いて胆石を取り除く治療(内視鏡的逆行性胆管膵管造影:ERCP)が行われます。
胆石の予防
胆石の予防には、バランスの取れた食生活が重要です。
- 規則正しい食生活: 3食きちんと摂り、特に朝食を抜かないようにしましょう。
- 低脂肪・低コレステロール食: 肉の脂身や揚げ物、卵黄などの摂りすぎに注意しましょう。
- 食物繊維の摂取: 野菜、海藻、きのこなど、食物繊維を多く含む食品を積極的に摂りましょう。
- 適度な運動: 肥満の解消は胆石予防に繋がります。
- 十分な水分補給: 胆汁の濃縮を防ぎます。
胆石は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性のある病気です。上記のような症状に心当たりのある方は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。